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島津の作ったPCR検査薬は何が”100%”なのか

そもそもの発端は、ツイッターでニュースサイトに噛みついたことでした。


さらに、GMOの方がツイートして賞賛していたのにも噛みついた。

確かこんなことをリプで返したと思う。(間違った内容と指摘があり、今は削除しました。)

このタイトルにある100%の精度は悪質なミスリードで、一致度は他の検査とどの程度一致したかを示すものですよ。


翌朝、そのツイートに対して指摘を頂いたので、何が間違っていたのかを調べることにした。



精度100%神話は誰が始めたのか。

元のニュースサイトが”精度100%”と書いていたが、島津のリリースには”精度”という言葉が何処にもない。
www.shimadzu.co.jp

これはニュースサイトが(悪意を持っていたかは知らないが)100%だけを独り歩きさせて、お気持ちで書いたものだろう。

100%の正体

島津のリリースには、陽性一致度と陰性一致度が100%とある。
これが何を意味するのかから調べよう。



Google先生に聞いてみると、なぜか陽性一致率と陰性一致率という単語が見つからない。代わりに、陽性的中率と陰性的中率が見つかるけども、これは原理的に特定の条件でしか100%にはならない数字に見える。(陽性的中率100%は、母集団が100%陽性でない限りありえない)

1-1. 検査精度 | 統計学の時間 | 統計WEB
陽性適中率 - Wikipedia


陽性一致率と陰性一致率の単語は、次の資料の中から見つけることができた。

臨床検体を用いた評価結果が取得された2019-nCoV 遺伝子検査方法について
https://www.niid.go.jp/niid/images/lab-manual/2019-nCoV-17-20200318.pdf

f:id:nyatla:20200411131021p:plain
結果の部分を見ると、陽性一致率 100% (10/10)や陰性一致率 100% (15/15)というものが並ぶ。

この数値は、母集団がすべて同じ結果のものに対して、同じ結果を異なる手段で得られることを示している。
つまり、100人の感染者だけを集めて検査すれば全員が陽性になるし、非感染者だけを100人集めて検査しても、一人も陽性にならない事を示している。

島津のリリースにある”100%”はこの事を示しているのだろう。

100%感染者を見つけ出せない理由

一見完璧に見える”一致度100%”は、あくまで「結果が分かった検査対象に100%一致する」に過ぎない。
感染者と非感染者が混在した現実での検査結果ではないのだ。

100%の確率で陽性・陰性に振り分けられると勘違いしてはいけない。



理由については、次の文章がヒントになりそうだ。
PCR法での感度, 特異性 (度) ってなに??

抗酸菌検査のPCRに関する文献や資料を読みますと, よく感度, そして特異性(度)という言葉がでてくるのですが, その感度, 特異性(度)とはなにか。公的な基準物質との比較および検討なのでしょうか??? また, できれば具体的にそれらの検討法をお教え下さい。

本来, 感度 (sensitivity), 特異度 (specificity) というパラメータは, ある疾患 (例えば心筋梗塞) を診断する時のある検査 (例えば心電図) のもつ診断能力を示す数値として定義されました。この考え方をそのまま検査方法, 検査試薬の評価に応用するように提案した者として, 本来の目的から多少逸脱して理解されていることに責任を感じています。
基本的な考え方は, 参照法 (reference) を“真の結果”として“仮定”した時, 評価している方法の一致率を算出するものです。従って, 原理的には“参照法はどんな方法でもよい”となります。抗酸菌染色・検鏡法を参照法とした時のPCR法の感度, 特異度も算出されます。

まず、前述の遺伝子検査方法についてのpdfを見ると、国立感染症研究所が用意した臨床検体を用いたとある。
これら臨床検体については、高い確率(限りなく100%に近い)で判定ができるが、それ以外の検体では見逃す可能性が(僅かでも)0とは言えない。(0ではないとも言えない。)


機械学習風に言えば、トレーニングデータに100%一致した状態であるから、未知の入力に対して100%の一致判定を保障すると言えないのと同じことだ。


どうすれば安心できるか

安全安心宣言をしたいのならば、PCR検査を無暗に繰り返しするのは控え、抗体検査ができるようになるまでおとなしく待つことが必要だろう。
もちろん、医師の診断上の都合での検査ならば、PCR検査は滞りなく出来たほうが良い。診断を下せるのは、患者でも検査薬でもなく、医師しかいない。